日本冬虫夏草の会

1.虫を倒す不思議なきのこ「冬虫夏草」

 冬虫夏草とは、虫を倒し虫を栄養にして成長する菌(キノコ)のことです。虫の中で菌糸を
充満させると子実体(キノコ)をのばし胞子をつけます。薬用に使用される冬虫夏草は、
バッカクキン科コルディセプス属のシネンシストウチュウカソウで学名を
Cordyceps sinensis (Berk.)Sacc.といいます。
 寄主(寄生した虫の部分)は、虫草蝙蝠蛾(コウモリガ)の幼虫より生ずるもので全体を
使用します。別名異名として夏草冬虫、虫草、冬虫草などがあります。原産の分布は、
中国の四川、雲南、甘粛、青海、西蔵などの標高3000m〜5000mの草原地帯に
産します。

2.冬虫夏草の名称

 冬虫夏草の名称は、中国から始まり、冬は虫となりよく動き、夏にいたれば草になるとの
想像から生まれた名です。名前の由来となった中国の冬虫夏草は、鱗翅類のコウモリガの
幼虫から生じたものです。
 中国では古来より陰陽二気の消長がこれを育てるとする陰陽論の思想から特に冬虫夏草が
尊ばれ、薬用として重用してきました。不老長寿、滋養強壮の妙薬としてまた、肺結核の治療
に使われてきました。
 近年では、喘息、肺気腫、腎炎、ネフローゼ、不眠、肝炎、糖尿、痴呆症、インポテンツ、癌等
に効果があることが解明されています。
 以上のように、冬虫夏草の名称は、本来中国の冬虫夏草、学名Cordyceps sinensis (Berk.)Sacc.
(和名シネンシストウチュウカソウ)に与えられた名称です。
 現在では、昆虫、くも、菌類、一部高等植物の果実に生ずるいわゆるきのこを総称して冬虫夏草
と呼んでいます。

3.冬虫夏草の種類と発生地 (冬虫夏草って種類があるの)

 冬虫夏草の分類体系は、清水大典氏より確立され、世界に約450種発見されています。
 その内日本で確認されているものが約350種といわれています。いわば日本は、冬虫夏草の
宝庫です。もともと熱帯圏のきのこといわれていますが、日本では沖縄から北海道まで発生が
確認されています。
 発生環境としては、20年以上の広葉樹林や照葉樹林内で沢沿いの高湿度の氾濫大地に
よく発生します。自然環境の整った地より発生するので、自然破壊のバロメーターの指標にも
されます。
 環境庁のレッドデーターの危惧種にも20種ほどあげられています。東京都内でもトタテグモから
生ずるクモタケ、オサムシから生ずるオサムシタケ、セミの幼虫から生ずるセミタケ等が、公園や
自宅の庭などから見つかることがあります。
 また、虫を斃すきのこともいわれ、菌が特定の虫を斃すことから安全な生物農薬として注目
され研究されています。

4.中国の古書から

 漢方の書物に冬虫夏草(シネンシストウチュウカソウ)の名称が初めて登場するのは、1694年に
書かれた「増訂本草備要」(汪昂)です。
 それ以前の冬虫夏草としては、蝉花(Isariacicadae Miquel)本草綱目があります。それ以後では、
大団嚢虫草(ハナヤスリタケ)等があります。
 最近日本では、冬虫夏草の代用品としてハナサナギタケ、コナサナギタケ、サナギタケなどの研究が
されています。
 中国では、涼山虫草など数種の冬虫夏草の研究が進行中です。冬虫夏草の種類によって薬効が
違う点で興味深いところがあります。

5.漢方から見た冬虫夏草

 「増訂本草備要」には、「冬虫夏草捕肺腎。甘、平、肺を保ち、腎を益し、血を止む。痰を化し、
労嗽を已む。四川嘉定府に産する所の者最も佳し。雲南、貴州に出ずる所の者之に次ぐ。
冬は土中に在り、老蚕の如く活し、毛有りよく動く、夏に至れば即ち毛土上に出れば、身に
連なりグに化し草と為す。若し取らざれば、冬に至りて即ち復化して虫と為す。」とあり、肺や腎に
力を与えてくれることがわかります。
 また、現代の中医書には、
 基本性味帰経:甘、温。肺、腎。
 効能      :1.滋捕肺陰・止血化痰
           2.益肺平喘 3.益腎陽
           4.捕虚
 臨証応用   :冬虫夏草は、肺陰虚、気虚の久咳虚喘や癆嗽喀血、腎陽不足の腰膝酸軟、
           陽萎遺精、病後の体虚、自汗畏寒などに適するとあります。
つまり、肺結核様症状、喘息、咳嗽、腰痛、病後虚弱、インポテンツ、寝汗、風邪をひきやすい、
疲労などに適しています。
☆諸注意として、表証、肺熱咳嗽には禁忌。陰虚火旺などのぼせのある場合は、処方との組み
合わせを考える。冬虫夏草の量が多過ぎると衄血や倦怠感が現れることがあります。
 私自身一日50gを服用し、身体がポカポカして寝つけなくなりましたが、次の日には解消した
経験があります。

 

6.培養から動物実験まで

 優れた薬効をもつ冬虫夏草は、天然にしか存在しないものでした。天然の冬虫夏草は、年々減少し、価格が安定しませんし個体により効能もあんていしません。冬虫夏草(シネンストウチュウカソウ)の人口培養は、困難であり、将来の夢とあきらめていましたが、それが世界で初めて日本で成功しました。純粋培養に成功し、最も優れた株の単離培養にも成功しました。人類の健康にとって大変ありがたいことです。単離培養された冬虫夏草の動物実験でもその優れた薬効が証明されました。現在までに確かめられているおもな効果は、
☆喘息、咳の緩和
 気管支の収縮を緩め、気管支を拡張させて咳を鎮め、痰を取り除く。
☆高血圧、狭心症、心筋梗塞の予防
 冠状動脈を拡張させ血液の心臓への運搬量を増やし、また血小板の凝集を防ぎ血栓を予防する。
☆心肺機能の強化
 過酸化脂質を除去しスポーツ能力を高める。
☆肝機能の改善
 肝硬変による腹水を緩和し、血液中のアルブミンタンパクを増加し肝機能を改善する。
 免疫力を強化しウィルス性肝炎をよぼうする。
☆糖尿病の予防
 糖尿病マウスの血糖値が3〜6時間で40%ていかした。
☆腎機能の改善
 血中尿素窒素、クレアチニンを早く低下させ、尿細管や糸球体の圧力を軽減し腎不全の進展を防ぐ。
 細菌の感染に対する免疫力を強化し乱れた免疫系を調整。抗生物質の害を抑制する作用もある。
☆免疫力の強化
 キノコ全般にいえる免疫力強化の中でも冬虫夏草は、特に優れている。
☆ストレス性の潰瘍の形成を抑制
 潰瘍部位の出血や血管の拡張、炎症性細胞の湿潤を防ぎ胃の粘膜を保護し潰瘍の形成を抑制する。胃液の分泌量の抑制。
☆インポテンツの改善
 陰茎海綿体の一過性、持続性の収縮をともに速やかに抑制し、陰茎を勃起させる。
☆体力増強
 マウスの強制遊泳時間の延長と乳酸、ビリルビン酸の低下がみられた。
☆老化の予防
 冬虫夏草には、脳の活性物質である、メラトニンが多量に含まれていることがわかりました。
 痴呆症(認知症)や老化防止に適している。

 

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